論文のリンクです↓
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jprs/advpub/0/advpub_2023-0067/_pdf/-char/ja
代表的な3枚のページを投稿に添付しますが、フルテキストは上記のリンクから見られます。
熊本に戻り、最初にとりかかったのが腋臭症(いわゆるワキガ)の治療でした。
腋臭症手術ではアポクリン腺という汗腺を物理的に切除します。
熊本では本来保険診療で可能なこの手術が、その難易度や血腫形成や感染リスクや
皮弁壊死のリスクから、ほぼ行われていない状態でした。
そのため、東京の銀座で1日9例の腋臭症手術(皮弁法)を執刀していた経験から、
ブログに保険診療で治療ができることを発信したところ、九州中から患者様が集まるようになりました。
そこで私の手術方法で、適切に効果を出しているかを自分自身が把握するために、「臭いと汗の量について10段階評価」をすることにしました。
1年2ヶ月間の期間で56例のこの手術を行ったため、その成績を統計学的に解析しました。
すると手術により
「におい 10点→1±1点」
「汗の量 9.4点→4.3±2点」
まで改善していました。
臭いに関してはみなさん「ほぼ無くなった」との評価でした。
汗の量はエクリン腺による部分が大きいため、手術ではあまり点数は減らないことを予想していましたが、
約半分まで減少する結果となりました。
ところが、手術から60日後(中央値)に、「前とは違ったにおいがしてきました」と言われる方が、
56例中11例(2割)の方で見受けられました。点数でいうと「においは1→3.7」まで増悪を認めました。
手術によって腋臭症の原因であるアポクリン汗腺は適切に、充分量を切除していましたので、そのにおいの原因は「多汗症の原因であるエクリン汗腺である」と推定し、
日本で初めて多汗症の治療薬として使用が可能になっていた【エクロックゲル】の外用を、においが気になる11例の方に試してみました。
すると、においのスコアが3.7まで増悪していたものが、
再び1.1まで改善し、みなさんにおいは気にならない状態になりました。
手術によって皮膚を剥がしますので、一時的にはエクリン腺は神経的に麻痺します。
剥がした皮膚が元にもどり、神経が再度つながって機能し始めるタイミングが、「術後60日」かかるということを、今回の結果は示しております。
ボトックス注射が多汗症に効くのも、この神経的な麻痺をボツリヌストキシンがつくりだすためです。
また手術でアポクリン腺を切除しても、2割の方は「エクリン腺からのにおい」を気にされることが分かりました。つまり、潜在性の脇の多汗症をあぶり出せたわけです。
さらにこの結果によって、「エクリン臭汗症」という概念がより明確になってきたと考えられます。
※腋臭症手術で、「何をターゲットとし、どれだけの範囲で切除したら良いか」を世界で初めて報告しております。
形成外科の先生方は是非ご参考にされてみてください。
論文作成には1年ほどかかりましたが、このたびJPRSから発表できましたので、ブログでもご報告させていただきます。
形成外科・美容外科
匂坂正信