静脈うっ帯性潰瘍は、長年治らずに苦しまれている方が多いと思われます。

確かに外来通院では、なかなか浮腫が改善せずに、

我々形成外科医も治療に難渋します。

 

しかし、一度思い切って入院加療をしていただければ、

2ヵ月前後で治癒させることが出来ます。

今回はその治療法と症例の経過をご紹介します。

 

 

 

 

 

 

 

適切な浮腫の軽減と、創傷処置を行えば、2ヵ月で治癒できたという症例です。

 

入院期間は41日間でした。

ベッド上安静は18日間で、その後は歩行を開始してもらいました。

 

 

 

【患肢挙上と圧迫について】

 

静脈うっ帯性潰瘍は浮腫により、創傷治癒がなかなか進まない状態です。

 

そのため、まずはベッド上での生活によって、下肢を下垂する姿勢を制限させていただきます。

そのために入院が推奨されます。

さらに、傷がある内は弾性ストッキングで軽く圧迫します。

この時の圧は10~15mmHgくらいの低圧としています。

特に痛みが強い初期の頃は、処置の方法もプロントザンという、かなり優しく創部を洗えるものを用いて、患者さんの痛さ、辛さに留意しながら治療に当たっています。

 

 

 

【創傷処置について】

 

傷の処置については、創傷治癒を促進させる「成長因子」の使用が必須です。

これによって、肉芽組織(傷に出来てくる肉)の増生と、新しい皮膚をつくる「上皮化」を、スピードアップさせることが出来ます。

 

日本では外用剤として使用できるフィブラストスプレーと、貼付する形のOASISが選択できます。

また、ヒト羊膜使用組織治癒促進用材料 エピフィックス(EpiFix)というものが、保険適応となりました。こちらの使用に必要な講習会は先日受講しましたので、後々選択枝に入ってくるかと思います。

 

傷を治す方に働きかける薬剤の後には、過剰な浸出液を吸い取ってくれ、感染対策をする軟膏などが必要となります。

 

これまではカデックス軟膏などの吸水性が高いものを選択していましたが、Sorbactという被覆材を使用し始めてからは、この治りの速さに驚きました。今はこちらが第一候補です。

 

Sorbactを貼付し、これと相性が良いアクトシン軟膏、ガーゼ貼付の処置としています。

 

 

 

 

【退院後の圧迫方法について】

 

入院中は医療スタッフが弾性包帯を巻きますが、退院に向けて、ご自身やご家族に練習してもらう必要もあります。

 

また、弾性包帯を巻くのはなかなか難しいため、ファロークイックというものが、簡便で、適切な圧迫ができるので、おすすめすることがあります。

 

もちろん、弾性ストッキングの着用が、

動作としては一番シンプルな装着方法ですが、

かなり圧迫力が強いため、一人の力では履けない方も多く、

ガーゼもずれてしまいがちです。

 

そのため特にご高齢の方は、ファロークイックの使用が一番楽だと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

静脈うっ帯性潰瘍でお困りの方は、

一度、形成外科にご相談下さい。

 

 

*しっかりした圧迫を始める前に、

下肢静脈エコー検査で深部静脈血栓症の有無を調べます。

そちらに関しては他院受診をお願いする形になります。

これまでに、下肢静脈の血栓の検査を受けたことがある方は、

下肢の静脈エコーの結果もお持ちいただくと、治療の介入がスムースになると思います。

 

 

形成外科・美容外科

日本形成外科学会専門医・指導医

医学博士

 

匂坂正信