本日は新型コロナウイルス感染症に罹患した際に呈する症状について触れていきます。
- Author:Kenneth McIntosh, MD
- Literature review current through: Mar 2020. | This topic last updated: Apr 23, 2020.
このブログの意義については前項の最初に記していますので、まだの方は”新型コロナウイルス:疫学”も御覧頂けますと幸いです。
(2020年4月17日追記)
我々のような一般開業医は今回の新型コロナウイルス感染症の流行によって、いきなり最前線の兵士と化しました。
御承知の通り、新型コロナウイルス感染症は無症候性キャリアの存在もあり、一般的な感冒症状と区別できる身体所見上の特徴に乏しく、いつ如何なる時に遭遇するか予想もつきません。
己さえも感染に暴露されていないかは明言できないPhaseに入って来ています。
感染症の専門家でもない我々一兵卒がではどうやってこの危機に対して向き合えばよいでしょうか。
そのために取るべき行動は明らかです。それは現在集積されつつある、医学的にエビデンスレベルの高い有益な情報を理解し、日々の診療に反映させることです。
そのような背景から、まずはUp To Dateの抄読会を始めることにしました。
同時にインターネット上に記録として残そうと思います。
普段の診療にお忙しい医療従事者の皆さまにとってもお役に立つことができれば幸いです。
<症状>
武漢におけるCOVID-19(新型コロナウイルス)肺炎の患者138例について、発症初期の臨床症状は以下のようでした。
・発熱(99%)
・全身倦怠感(70%);体のだるさ
・乾性咳嗽(59%);痰を伴わない咳
・食思不振(40%)
・筋肉痛(35%)
・呼吸困難(31%)
・喀痰増加(27%)
以下、原著論文からの引用Figureです。
Wang D, Hu B, Hu C, et al. Clinical Characteristics of 138 Hospitalized Patients With 2019 Novel Coronavirus-Infected Pneumonia in Wuhan, China. JAMA 2020. (Impact factor 51.27) より引用
この原著論文以外にも武漢における報告がいくつか紹介されていますが、何れも同様の臨床症状であったようです。
発熱に関しては、38℃未満の微熱が20%の割合であったとする文献( Huang C, Wang Y, Li X, et al. Clinical features of patients infected with 2019 novel coronavirus in Wuhan, China. Lancet 2020; 395:497. Impact factor 59.102)があり、こちらの母集団はPCR検査で陽性であった患者41例です。うち男性は30例(73%)であったとのことです。こちらの文献では症状の分布は以下のようでした。
・発熱:40例(98%)
・咳:31例(76%)
・筋肉痛又は倦怠感:18例(44%)
・喀痰増加:11例(28%)、頭痛:3例(8%)、喀血:2例(5%)、下痢:1例(3%)
また、他にも中国の文献で武漢やその他の中国の地域の解析では(n=1099)、入院時に腋窩で測定した体温が37.5℃を超えるものは44%に留まっていたとのことです。しかし、初期に微熱であっても最終的に89%が37.5℃以上の発熱を認めたとのことです。(Guan WJ, Ni ZY, Hu Y, et al. Clinical Characteristics of Coronavirus Disease 2019 in China. N Engl J Med 2020. Impact factor 70.67)
(感想)微熱の場合、体温測定時の活動性や女性であれば基礎体温の上昇の時期(排卵周期や妊娠)によっても起こり得るため、新型コロナウイルス感染を疑い、診断に繋げることは非常に困難だと実感しています。
イタリアの59例のCOVID-19(新型コロナウイルス)感染者の文献で、34%の症例で嗅覚または味覚異常を認め、19%でその両方を認めたとする報告もあります。しかし、この所見によって新型コロナウイルスを区別可能かどうかは定かではないと付記されてもいます。
以上が2020年4月16日時点でのUp To Dateの情報です。
この後に更新された情報については随時付記致します。
今回は、症状について解読していきましたが、日ごろからこれらの症状が自分に当てはまらないか、チェックしておきたいものだと思いました。
これらの症状が少しでも怪しければ、ヒトにうつさないことと、自らが重症化しないように必ず医療機関や保健機関に相談しておくことが必要だと思います。
このウイルスによる犠牲を少しでも少なくするため、ネットワークは正しく使用し、電話での経過観察などを活用していくことは必要と考えています。
匂坂正孝 M.D., Ph.D.