引用論文「Environmental Role in Influenza Virus Outbreaks

著者:Harini Sooryanarain and Subbiah Elankumaran

Journal:Annual Review of Animal BioSciences 2015.3:347-373

 

今回はどのような環境がウイルス感染のリスクを高めるのかを勉強するため、上記論文を読んでみました。インフルエンザ流行についてのレビューで、impact factor 5.2のジャーナルです。

 

新型コロナウイルスに直接当てはまらないまでも、ウイルス感染様式、ウイルスの生存に有利な状況を把握するには参考になると思われます。

 

<知見>

ウイルスは飛沫となって人体から排出され感染しますが、その飛沫を本論文中ではDroplet(小滴、ドロップ)と呼んでいます。

 

・大滴性Droplet(>5μm)では1m以上飛沫せず、接触感染の様式で伝播。

→上気道にトラップされて感染発症するため上気道炎(咽頭炎など)を呈する。

・小滴性Droplet(<5μm)では長期間空中を漂い、エアロゾルとして伝播。

→下気道に到達し肺炎発症するため重症化の可能性。

・20μm以上のサイズだと重力の影響を受けて落下する。

・Droplet(小滴、ドロップ)のサイズは温度、湿度、構成要素により決まる。

 

温度については寒いとウイルス生存に有利。

 

湿度は低すぎても高すぎてもウイルス生存に有利。中間程度の湿度がウイルスの安定性を減少させる。→適度な湿度を保ち、換気をしっかりと行うことが必要。

 

<感想・考察>

これからの時期は湿度が上昇して来るため、ウイルスの飛沫は大滴性ドロップになると考えられます。そうするとこれまで以上に接触感染の予防が必要になって来るかもしれません。引き続き、自身からヒトに感染させないことを念頭に、マスクで飛沫を防ぎ、手洗いで接触感染を防いで行きましょう。

 

温度に関しては、これ以外にインフルエンザウイルスに関する報告で、米国79都市の調査で寒冷がウイルスに有利で、気温が高いと感染発生を有意に減少させるとするものがあります(Int J Biometeorol. 2018.62:69-84)。しかし、一方で今回の新型コロナウイルスに関しては南半球での流行拡大が認められており、インフルエンザウイルスほどの温度によるウイルス生存への影響は無いのかもしれません。この点、今後の調査を待ちたいと思います。

 

今後、ウイルス感染を防ぐために有益な情報があれば随時記していこうと思います。

 

匂坂正孝 M.D., Ph.D.(医師、医学博士)