褥瘡治療について、形成外科的な手術をもちいた治療法をご紹介します。
皮下ポケットは全長30cmを超える症例で、
しかも肛門近傍に、皮下ポケットに通じる2か所の瘻孔まで認めていました。
幸い内部には壊死組織は少なく、比較的きれいで、
充分に内部を洗える褥瘡の開口部を認めていたので、
むやみにポケット切開は行わず、洗浄と軟膏処置でまずは肛門近傍の瘻孔を癒合させ、
その後からVAC ULTAを用いた局所陰圧閉鎖療法(NPWTi-d)を行う方針としました。
治り具合をみながら、手術による創閉鎖も行う予定としました。
軟膏処置はプロスタンディン軟膏で開始しましたが、
やや感染兆候を認めたため、ソルベースとイソジンを混ぜて、
吸水性をアップさせた軟膏を組み合わせて用いました。
局所陰圧閉鎖療法を開始後、皮下ポケットは順調に縮小していきました。
局所陰圧閉鎖療法を1カ月施行した後に、皮弁形成術によって、創閉鎖を行いました。
経過のまとめです。
3ヵ月かかりましたが、何とか創閉鎖をすることができました。
術後1~2か月は、さらに創部の除圧を継続して、内部の組織がしっかり固まるのを待つ必要があります。
現在は経過観察しております。
褥瘡があるために、施設からご自宅に帰れない方や、転院先が見つからずに困っていらっしゃる方は、是非一度ご相談下さい。
当院は療養型病床であるため、褥瘡が治った後も、長期的に入院継続が可能です。
双子の兄の匂坂正孝医師が、小児科・小児外科のNICUや肝移植外科のICU管理で行っていた精密な経管栄養の技術を、長期的な管理が必要な高齢者にも適応させ、誤嚥するリスクを医学的に有意差をもって少なくすることが出来る、経管栄養の方法を当院で確立させました。
近日中に英文誌に掲載されます。
また、経管栄養で投与する栄養剤についても、兄の仕事が認められ、株式会社明治のアドバイザーとして、製品開発に携わっております。
このような診療体制により、褥瘡の患者さんを治癒までつなげることが可能な栄養状態に導くことが出来ています。
寝たきりで長期入院中の方も、誤嚥で苦しむことがなく、安全に経管栄養を施行できています。
われわれ双子の兄弟の、それぞれの最先端の知識、経験、技術を組み合わせて、当院では治療を行っています。
かなり重症な方も受け入れておりますので、現在は入院までに少しお時間をいただく場合もありますが、まずは外来で状態をみさせて頂き、治療介入させて頂きます。
日本形成外科学会専門医・指導医
医学博士
匂坂正信